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美ヶ原(焼山沢から) [八ヶ岳とその周辺]

2017/09/03(日)

■第359回 : 美ヶ原(焼山沢から王ヶ頭(2034m)


この日の行先は、訪れるのがこれで3回目となる、割とお気に入りの美ヶ原です。今回は、整備されている登山道なのに、なぜか登山地図にも現地の案内図にも載っていない、知られざる焼山沢コースを登ってきました。
美しい沢沿いの道では、清冽な滝に癒やされたり、ヒカリゴケに初めて出会えたりと、楽しさが満載でした。
(焼山沢コースのハイライト:焼山滝)

なお、路線バスを降りてから長々と歩いているのは、通常はマイカーかタクシーの利用が前提となるコースを、どうにか鉄道&バスだけで実現させようとした結果ですので、普通はもっと楽に行くことのできるコースです。

 累積標高差(登り):1231m / 距離:13.9km / 歩行時間:4時間20分 (休憩除く) 
標準タイムは不明(登山地図の収録範囲外) 

(往路)
古淵 04:45-04:49 町田 04:55-05:38 新宿
新宿 05:41-06:01 東京 06:28-07:53 上田
上田 08:42-09:24 丸子駅前 09:35-10:03 築地原

(登山行程)
築地原バス停      10:05
焼山沢登山道入口    11:10
焼山滝         12:05-12:15
美しの塔        13:45-14:05
王ヶ頭         14:40-14:55
美ヶ原自然保護センター 15:10

(復路)
美ヶ原自然保護センター 16:30-17:45 松本
松本 18:35-20:35 八王子 20:54-21:17 古淵


大きなマップで見る(Googleが運営するFirebaseのサイトに遷移します。※上に埋め込んだマップも同サイト上のものです)

北陸新幹線を上田で下車したら、ここから路線バスを2本乗り継ぎます。この日、長野県内は広く晴れの予報が出ていて、実際にこの時はほぼ快晴でした。このあとも市街地にいる限りは、予報通り良く晴れていたらしい。
丸子駅でバスを乗り換えます。1969年に廃線となった上田丸子電鉄の終着駅がこのあたりにあったようなのですが、当時の遺構はほとんど残されていない様子で、バス停の名前に辛うじてその名残を留めていました。ちなみに、奥のほうに見えている稜線が、目指している美ヶ原ですので、この時間は良く晴れていたようです。
自分が唯一の乗客だった2本目のバスを、終点の築地原で下車します。まだこの先にもバス停はいくつかあるものの、そこまで入る便は登山での利用に全く向かないダイヤなので、実質的にここが焼山沢コースの登山口に最も近いバス停になるはず。それでもその登山口までは、ここから5km近く歩かなければならないのですが‥‥。


ここから、ほぼ1本道のこの車道を、登山口まで1時間以上かけて歩きます。バスを降りる頃には、先程までの晴天が嘘のように曇ってしまったので、ちょっと先行きが心配な滑り出しとなりました。
筑地原バス停付近の集落を過ぎると、その先は建物を時折見掛ける程度になって、車道歩きは少々退屈でした。ほとんど住民がいないからか、この道を歩いている人にも全く出会いません。
その後もいくつかのバス停を見ますが、すでに触れた通り、ここまで来るバスは登山での利用に向いた時間にはありません。それでも、これほど住宅の少ない地域までバスの運行が存続していることは驚きです。
武石観光センターまで来ると、食堂や釣り堀・キャンプ場などがあって、それなりの人出で賑わっていました。
少し先にはこんな遊歩道もありました。渓谷から話し声が聞こえたので、ここを訪れている人もいたようです。
相変わらず上空は雲に覆われたまま。もし雨粒でも落ちてくれば、上のほうの天気も望み薄とみて引き返すことも考えていたのですが、比較的明るい空だったことに望みを託して、このまま進んでみることにしました。


登山口に到着です。知名度の低いコースですが、この駐車車両の分だけ、先行者がいることになるのでしょう。
マイナーなコースだけに、登山口も心なしかひっそりとして見えます。
それでも詳細な案内図があり、道標もしっかりと設置されていて、道の整備状況に不安は感じませんでした。


登山道は最初だけ、やや草深い中を歩き始めますが、すぐに明瞭な道に変わりました。
そして間もなく林道に合わさって、しばらくはこの林道を進みます。
林道を終点まで歩いた先で、焼山沢を徒渉すると、いよいよ対岸から沢沿いの登山道が始まりました。徒渉点は、通常の水量であれば靴を濡らさずに渡れるように、いい具合に石が置かれていたようです。
沢沿いの道は清涼感がいっぱい。この日は元々朝から気温が低めだったことに加えて、日差しがなくて気温の上がりが鈍く、そこに冷たい沢水による空冷効果が重なって、快適に登っていくことができました。
ずっと沢沿いを進むのかと思っていたら、沢から離れる箇所も結構あります。でも、沢沿いゆえの涼感こそ減ってしまいますが、岩などが苔生した瑞々しい雰囲気は沢を離れても変わらず、引き続き気持ちの良い道でした。
しかも、上手く傾斜を抑えて道が付けられているのか、急に感じる箇所がほとんどなく、登りやすさもです。
2度目の徒渉点も、水量は全く問題なし。ここは、直後に再度徒渉があって、すぐにこちら側に戻ってきます。
美しい景色には癒されますし、涼やかな沢音も実に心地良いです。


さらに登ると、前方に大きな滝が見えてきました。
これが焼山滝。焼山沢コースで最大の見所です。
最初に見えてきた部分のほか、その上にも2段の滝が掛かっていて、合わせるとかなりの落差になりそうです。
なかなか立派な滝なので、珍しく縦長サイズにして撮ってみました。
右から合わさる小さな沢にも滝があって、本流に掛かる左が雄滝、右が雌滝と呼ばれているようです。こんなに清々しくて素敵な雰囲気の場所なのに、マイナーなコースだけにほかには誰もいません。この美しい景色をしばらく1人で独占するという、すごく贅沢な時間を過ごせました。


焼山滝の先では、沢から一旦離れて大きく迂回しながら、滝の落差分を少しずつ登っていきます。そしてその途中に、ヒカリゴケの自生地がありました。
登山道上にいながらにして、少なくとも2箇所で見られたようです。どちらもこんな窪みの奥でした。
ヒカリゴケを見るのは、これが初めて。弱いながらも、輝いているようにすら見える美しい緑色の光に、しばらく見入ってしまいました。


焼山沢沿いに戻ってきました。先程下から見上げていた焼山滝の、さらに上部にあたる位置だと思われます。
そこでも焼山沢は小さな滝となっていて、その間近を通過します。迂回して巻いていた間の焼山沢は、ずっと等高線が密集した中を下っているので、焼山滝以外にもこのような小滝が多く存在しているのでしょう。
瑞々しい緑に囲まれて、心が洗われるような景色です。


上流部に入ると、次第にササが増えてきました。
このあたりまで来ると、横を流れる沢もだいぶ細くなり、せせらぎも控え目になっています。
さらに登ると、ついに沢から水音がしなくなりました。たまに人とすれ違う程度で、前後にほとんど誰もいない状況が続いていますから、熊鈴を鳴らせばその音だけが周囲に響き渡り、熊鈴を止めると静寂が訪れます。


最後のほうは少々急になり、ややきつい登りになりましたが、ようやく頂上台地への入口にたどり着きました。
牧草地に入ると、いよいよ目の前には美ヶ原らしい開放的な景色が広がるようになりました。
見渡す限り緑の草原が続く中を進むのが、すこぶる気持ち良いです。尾崎喜八が「美ヶ原溶岩台地」で歌っている、「登りついて不意にひらけた眼前の風景に、しばらくは世界の天井が抜けたかと思ふ。」を実感して余りある景色に、思わずテンションが上がります。ここにきて、日差しが少し戻ってくれたのもラッキーでした。
牧草地に出た頃から、左手からは鐘の音が聞こえるようになっていましたが、もうしばらく登って、ようやくその方向に美しの塔が姿を現しました。塔の周りが広場になっているので、そこに着いたら休憩としますか‥‥。
振り返ると、頂上の王ヶ頭も見えてきていました。いつ見ても、電波塔の多さが物々しくて興醒めなのですが。


牧草地に入ってからも、結構登らされるのが意外に堪えましたが、ようやく観光客が行き交う遊歩道が迫ってきました。なお、左奥に見えている山並みは八ヶ岳で、中腹から上は完全に雲の中に入っていたようですね。
ここが焼山沢登山道からの出口。柵の間を抜けて遊歩道に入れば、しばらくは平坦な道になります。
遊歩道から出口を振り返っています。美ヶ原の頂上部で見掛けたいくつもの案内図には、焼山沢コースを記載しているものが何故かほとんどなかったのですが、さすがにここには焼山沢コースの案内図が立っていました。


ここからは多くの観光客と一緒になって、美しの塔に向かいます。標高2000mの頂上台地では、時折日が差す程度で概ね曇っていることに加えて、やや強めの風が終始吹いていて、かなり涼しく感じられます。身体を動かしていてちょうど快適なくらいだったので、車で上がってきた観光客の多くは、上着を羽織るなどしていました。
登山道の出口から美しの塔までは5分ほど。周囲にたくさんあるベンチの1つで、しばらく休んでいきました。
美しの塔です。霧が出やすい美ヶ原だけに、塔の上部には遭難防止用の鐘が付けられていて、訪れた観光客が次々と塔の中に入っては、鐘を鳴らしていました。


疲れた足をゆっくり休めたら、まだ少し遠くに見えている、最高点の王ヶ頭へ向かいます。
牧草地の中を、牧柵で区切られた遊歩道を進みます。
牛はいいなぁ、どこでも気ままに歩けて。深田久弥も「日本百名山」に、果てしもない山上の草原が「さぁ、どこでも勝手にお歩きなさい、といった風に続いている」と書いているので、昔は人も自由に歩けたのでしょう。
このあとしばらくは、美ヶ原ののどかな景色が続きます。


このあたりから、王ヶ頭へ向けての最後の登りが始まります。
美ヶ原の頂上部に到着です。
振り返ると、頂上が曇ってしまったのに対して、先程までいた牧場のあたりには日差しが残っていたようです。
頂上に建つ王ヶ頭ホテル。本当に美ヶ原で一番高いあたりに建っています。
だから最高点の王ヶ頭も、ホテルのすぐ裏手に当たるような場所でした。
周囲にも雲が多くて、展望も今ひとつでしたが、一応パノラマ写真にしてみました。南側に見えていたのは、いずれも過去に登っている山々で、中でも2013年に三峰山~二ッ山~鉢伏山と縦走したのは印象深い山行です。
  ※下の写真は縮小版で、大きな写真(文字入れなし)は こちら です。
西側を見ると、すぐお隣の王ヶ鼻がガスに巻かれかけていました。


王ヶ頭でしばらく過ごしたら、下山を開始します。
といっても、下るのはすぐ下に見えている美ヶ原自然保護センターまで。標高差は130mほどしかありません。
しかも、良く整備された歩きやすい山道なので、15分ほどで下り終えてしまいました。
美ヶ原自然保護センターに到着。時間に余裕があったので、食堂で蕎麦を注文しつつ、ゆっくりと過ごします。
センターの裏から、頂上の王ヶ頭(右側)や牧場のあたり(左側)を振り返ってみました。
  ※下の写真は縮小版で、大きな写真は こちら です。
最後はここからバスで松本駅へ向かいます。
従来からのバス路線は縮小が相次いで、2015年に一旦は美ヶ原を日帰りで訪れるのが困難になっていたのですが、今年大々的に展開されている「信州ディスティネーションキャンペーン」の関連事業によって、昨年と今年は松本駅とこのセンターを結ぶバスが運行されることになり、この日の山行もそのおかげで成立したのでした。
このバスは昨年も利用しましたし、結構使い勝手が良いので、来年以降も存続してくれることを願っています。

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