SSブログ

石垣山・白銀山 ~ 古の関白道を歩く ~ [箱根]

2013/03/23(土)

■第251回 : 石垣山(262m)・白銀山(993m)


今回はまず、豊臣秀吉が築城した“一夜城”で知られる石垣山に登って、石垣山一夜城歴史公園を散策します。
その後は尾根伝いに残る古い道筋を拾いながら進み、白銀山を越えて大観山を目指します。
その古い道筋は、秀吉が小田原攻めに向かう際に通過したとされることから“関白道”と呼ばれ、明治以降は登山道として歩かれたこともあるようなのですが、近年は顧みられることもなく藪に埋もれつつありました。

そこに再度光を当てたのが、間伐作業の折にたまたまこの古道の存在を知った「小田原山盛の会」で、2008年頃から調査が始められ、再整備に向けた刈り払いなどの作業も少しずつ進んでいる模様。
最近になってようやく、僅かながら一般のハイカーが歩き通した記録も見つかるようになってきました。

そこで出掛けてみたのですが、道筋は幾度も消失し、歩行困難な箇所も多数あって、久々に緊張感のある山行となります。一般登山道の感覚で歩けるレベルにまで整備を進めるには、なお多くの時間と労力が必要でしょう。
これから関白道を歩く方には、十分な情報収集をした上で、それなりの覚悟で臨まれることをお薦めします。

 累積標高差(登り):1374m / 距離:14.9km / 歩行時間:4時間20分 (休憩除く) 
標準タイムは不明(登山地図の収録範囲外) 

(往路)
大沼 06:51-07:00 相模大野 07:09-08:00 小田原
小田原 08:17-08:19 早川

(登山行程)
早川駅    08:20
石垣山    08:55-09:20
御所山砦跡  11:45
老懐山    12:00
白銀山    12:20-12:25
大観山バス停 13:20

(復路)
大観山 13:45-14:00 箱根町 14:35-15:10 市民会館前
小田原 15:40-16:35 相模大野 16:48-17:00 市営斎場前


大きなマップで見る(Googleが運営するFirebaseのサイトに遷移します。※上に埋め込んだマップも同サイト上のものです)

早川駅からスタート。多くの人で賑わう小田原のすぐ隣の駅なのに、意外なほど静かでした。
朝の時点では、空は青く澄んで日差しもタップリ。春らしい陽気に、最初から山シャツ姿で歩き始めます。
早川駅から石垣山までの経路はいくつかありますが、みかん畑の中を抜けていく“関白農道”を選択しました。
この後で歩く予定の“関白道”と関白繋がりですし、この道も秀吉の頃から使われていた模様です。
振り返ると、相模湾が朝の日差しを受けて輝いていました。


舗装された道路を30分ほど登って、石垣山一夜城歴史公園の入口に到着です。
この山はどの方向から登っても全て車道歩きなので、登頂したという気分は希薄でした。
広い駐車場には清潔なトイレのほか、高級感漂うレストランがありました。
春・秋の行楽シーズンの休日には「小田原宿観光回遊バス」が運行されて、それに乗って来ることもできます。


歴史公園の中に入ります。山城だけに、園内を巡る道も登山道っぽい感じの箇所が多かったです。
朝9時は、さすがに観光客の出足よりも早いらしく、園内ではほとんど人の姿を見ませんでした。
二の丸跡は、寝転がると気持ちの良さそうな芝生広場でした。
二の丸跡の先には展望台がありました。右に写っている樹木の根元には三角点もあります。
展望台からの展望。左端が箱根駒ヶ岳、そのすぐ右で一番高く見えるのが神山で、右端は明神ヶ岳です。
石垣山城は、その名の如く総石垣の山城。築城後400年が経過した石垣は、度々大地震に見舞われてこの有様。
でもこうして、ありのままの姿から当時の面影を感じられるのは貴重だと思います。
変に鉄筋コンクリートで再建した結果、完全に過去をリセットしてしまうよりも、よっぽど良いのでは?
こちらは本丸跡の広場。
本丸跡には物見台があって、小田原市街や相模湾を見渡すことができます。
彼方にはうっすらと三浦半島まで見えていたのですが、縮小写真では分からなくなってしまいました。
本丸跡の奥を一段登った所に天守台跡があって、ここが石垣山の最高点になります。
手狭な天守台跡から本丸跡を振り返りました。
下りは二の丸跡とは反対側を回って、さらに西曲輪跡などを見ていきました。


石垣山を後にして、車道を南西に進み、有料道路のターンパイクの上を渡る手前(橋の欄干がもう写真右端に見えています)で、左に分岐する小径に入ります。
その先にあったのは、堀割状に深くえぐられた山道でした。
この時点では何も感じずに歩いていますが、後から思えば、ここがすでに関白道だったのではと思います。
少し進むと、ターンパイクに突き当たってしまいました。
ターンパイクは自動車専用道路なので、歩行者の通行は認められていません。
でも真向かいにある大杉窪林道に入るだけなので、車列が途切れるのを見計らって横断させてもらいました。


大杉窪林道は舗装路と未舗装路が半々くらい。この林道の経路も、関白道と重なるとされているようです。
大杉窪林道を起点から終点まで全線(といっても1.3kmですが)歩いて、白銀林道に突き当たりました。
「小田原山盛の会」のルート図では、ここから山道に取り付くように描かれているので、突き当たった先の斜面にそれらしい道を探します。しかし道など全く見当たらないばかりか、適当に登ることも困難な急斜面でした。
ということで、そのすぐ近くから分岐する桜山林道に入ります。


桜山林道が尾根をかすめるたびに、尾根上の踏み跡の有無を確認しますが、2回目の左カーブまでは空振り。
でも2回目の左カーブの直後に、右手に堀割状の地形を発見しました。一目見て、関白道だと確信します。
一応黄色いテープが付けられていましたが(写真左上)、これだけ深くて明瞭な堀割ですから、テープがなくても見逃さなかったでしょう。かつて、余程良く歩かれていた道に違いありません。
堀割状の道には、風で折られたり、林業作業で打ち落とされた枝などが散乱して、決して歩きやすくはありません。今となっては歩く人も稀なのでしょう。
明瞭な堀割はしばらく続き、その間に境界見出標の赤い杭と、ピンクテープが道案内に加わります。
やがて堀割は不明瞭になりますが、その後も、赤い杭やテープを頼りに進むことができました。


前方にターンパイクが現れると、その下をトンネルで抜けていきます。このトンネルは「小田原山盛の会」のルート図にも写真で載っていたもの。ここまで関白道を外さずに歩けているようです。
トンネルをくぐってから振り返りました。ターンパイク上に見えている標識は、5枚組の「エン」「ジン」「ブレ」「ーキ」「使用」の3枚目と4枚目。Googleのストリートビューでその位置を確認できます。


トンネルの先にしばらく続いていた明瞭な堀割は、次にターンパイクと接する付近で消えてしまいます。
そろそろターンパイクを渡るべき頃なのですが、そこではターンパイクの対岸に道の続きを発見できません。
仕方なく堀割が消えた先に道無き道を少し進むと、堀割が復活したので、そのまま進んでみます。
その堀割も、間もなくこんな所で終わってしまって、上にはターンパイクのガードレールが見えています。
この斜面には踏み跡などなかったのですが、いい加減ターンパイクを渡りたいので、強引に登ってみました。
ターンパイクに出て横断してみると、ちょうど正面に山道の続きが見つかってホッとします。
これは横断後に振り返って撮ったもので、写真の真ん中付近で黒く写っているあたりから出てきました。
ガードレールを跨いだ時にも、振り返って下を覗いていますが、1つ前の写真の急斜面は、とても通り道には見えませんでした。もしも逆方向に歩いていたら、ここで道の行方を見失っていた可能性が高いです。
これも横断後の写真ですが、見ているのは石垣山側(東側)です。「ブレーキの効きを確認」という標識も、Googleのストリートビューで確認できますので、この地点を特定したい方はそちらへ。


ターンパイクを渡った先の山道は、少し続いただけで途絶えてしまいます。
写真中央やや上寄りに写る黄色い杭を右折すると、その先でターンパイクに突き当たって消失していたのです。
ターンパイクを避ける道筋がどこかにあるかもしれないと、足場の悪い急斜面を少し右往左往して探しましたが、そのような道筋などどこにも存在しないという結論に至りました。
このため、ターンパイクの路肩を歩くことを余儀なくされましたが、幸いにもすぐ先で鍋割駐車場に出ました。
「小田原山盛の会」のルート図で、鍋割駐車場の手前に「歩道必要箇所約100m」と書かれていたので、ちょうどその箇所を通過したのだと分かりました。
写真は、鍋割駐車場手前の路肩で見掛けた満開のミツマタです。
鍋割駐車場。ここで、通過見込み時刻を大幅に過ぎていることが判明しました。
所々で道筋が不明瞭になったり途絶えたりするため、進路を慎重に見定めながら歩く必要があって、普段よりも相当に遅いペースになっていたのです。ここからは、少し速度を上げて歩くことにしました。


鍋割駐車場の先では、細い山道が赤テープの誘導で続いていきます。
テープによる目印がなければ、そこに道があるとは分からないような箇所が多くなっていきました。
行く手にはさらに笹も現れました。この場所はまだ密度が薄いですが、次第に笹ヤブの通過も増えていきます。


御所山砦跡への分岐点で、この日初めて道標を見ました。
道標が示す脇道を登ってみたものの、一番高いと思われるあたりをウロウロしても標識などは見つからず、要領を得ないまま引き返しています。山城に関する知識でもあれば、地形から何か分かったのかもしれませんが。
その後は道に明瞭さが増してきて、進路の不安なく歩けるようになります。
箱根湯本からの道を合わせる少し手前で、道を僅か1~2mだけ外れた右手の高みに「老懐山」の標識を発見。
ここには箱根湯本から登った3年前にも来ていて、これ以降白銀山まではその時にも歩いている道になります。
すぐに分岐点に出ます。今回は、地面に木を2本並べて通せんぼをしてある右後方から歩いて来ました。
3年前に登った箱根湯本からの道は笹に埋もれていて、当時の記憶にはない小さな標識が存在を示しています。
その一方で、3年前に立っていた「←石垣山 白銀山→」という立派な道標は、見当たらなくなっていました。
さらに登ると、今度は弾正ヶ原への分岐標識を見ます。
3年前は、その弾正ヶ原へ下った後で星ヶ山を目指したのですが、その当時すでに弾正ヶ原への道は消えていて、激しいヤブ漕ぎを迫られたのでした。


白銀山の頂上に着きました。この場所の様子は、3年前とほとんど変わっていないようです。
三角点のほかには、1つ前の写真の雨量計があるだけの狭い山頂です。
難路に時間を取られて、到着は見込みより1時間も遅れていました。大観山13:45発のバスに間に合うと帰りが楽なのですが、あと1時間少々しかなく、ほとんど余裕がないので、休憩を5分で切り上げて先へ進みます。


白銀山から大観山方向への道は、最初にターンパイクに降りるまでの間は、まずまずの歩きやすさでした。
「玉川大学演習林」の看板の所で、一旦ターンパイクの路肩に出て、またすぐ山道に入ります。
そこから先は、高さがあって良く目立つこの境界見出標が良い目印になります。
が、それでも進路が不明瞭になる箇所が2~3箇所ありました。いずれの箇所でも、たまたま最初に選んだ道が正解だったので、時間をロスせずに済みましたが。。。
そして何度か、ターンパイクに出ては、またすぐ山道へ、というのを繰り返します。
アップダウンも結構あるタフな道は、疲労が進んできた身体にこたえます。中にはロープを頼るような急登も。
このほか、かなり笹ヤブの濃い一帯があったり、本当にそこが正しい進路上なのかと疑うような、足場の悪い急斜面が出てきたりして、ワイルドな道に最後まで気を抜けませんでした。
開放的な笹原に出て、平坦な道路跡に迎えられれば、ゴールは間近。ようやく緊張感を解くことができました。


大観山に到着しました。ここにはビューラウンジがあるほか、建物の裏手からも展望を楽しむことができます。
が、雲がなければ、芦ノ湖の右上あたりに富士山が見えるはずでした。この日のルートは途中からの展望がほとんどなく、ここから見る景色が最大の楽しみだったので、これにはガッカリです。
富士山が雲に隠れるのは良くある事で諦めがつくにしても、せめてもう少し澄んだ青空であって欲しかった‥‥
パノラマ写真も、富士山がないとパッとしない印象ですね。一番高く見えているのが箱根駒ヶ岳と神山です。
大きなサイズの写真は【こちら】


大観山の本当の頂上は、少し西寄りに見えるこちらなのですが、頂上部を無線中継施設が占めているばかりか、そこに通じる道路は入口からして立入禁止です。登頂不能のため、大観山は登った山には数えません。
当初の予定ではバスに乗る1時間くらい前に着いて、このビューラウンジでゆっくりできる見込みでした。
しかし、バスにはなんとか間に合ったものの、ほとんど時間の余裕はなく、中をちらっと覗いただけでした。
大観山バス停で、1日3往復しかない貴重なバスを待ちます。
大観山からは元箱根か湯河原駅に行くバスしかなく、箱根町でバスを乗り継ぎ小田原駅に向かうことにします。
箱根町での乗り継ぎ時間に芦ノ湖の湖畔に出てみると、ちょうど海賊船が接岸しようとしているところでした。


ここまでに書いてきた通り、関白道はまだまだ整備不良で、満足に歩ける状況にはありません。
最近はネット上で問題なく歩けたという記事を見るようになっていて、その存在が私がこの日出掛けることを後押ししていたのですが、その手の記事を読んだ印象と現実との間には、相当の乖離があると感じています。

もしかすると、問題なく歩けたという人は、関白道をとことんトレースすることにはこだわらず、不明瞭な所などで歩行禁止のターンパイクを歩いてスルーしてしまった区間が多いのかもしれません。
そうでなければ、難路を苦にせずに歩けるだけの高度なスキルを持つ人だということになりそうですが、だからといって、誰もが楽に歩けるかのような印象を与える記事を書いてしまうのでは、客観的な視点が欠けていると言わざるを得ません。読者の側に様々なレベルの人がいることを想像しなかったのでしょうか。
私の感覚では、現時点で不特定多数を相手にこのコースを薦めるのは時期尚早であり、十分な経験を持つ人が、相応の覚悟を以て臨む場合にのみ、この記録を情報源の1つとして活用して頂ければと思っています。

タグ:箱根
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:スポーツ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。