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鋸山 ~ 東京湾の大展望台 ~ [房総半島]

2014/12/27(土)

■第297回 : 鋸山(329m)


この日は房総半島の鋸山へ。すっかり観光地化されていて、ロープウェイでもあらかた登れてしまう山ですが、北側の斜面には自然が豊富に残された登山道も何本か存在しています。
その中から、最も整備が最小限にとどまりワイルドな雰囲気が保たれている「沢コース」を登って、鋸山の稜線上を東から西へと縦走した後、日本寺のある南側へ下るルートで歩いてきました。

鋸山の代名詞でもある、切り立った岩壁の迫力も見事でしたが、やはり一番目を奪われたのは、東京湾を望む大展望です。空気が澄んだ冬晴れのこの日、東京湾の先には、富士山をはじめ伊豆大島や伊豆半島などもスッキリと見渡せて、低山ながらスケールの大きな眺望が存分に楽しめました。

 累積標高差(登り):551m / 距離:8.3km / 歩行時間:2時間35分 (休憩除く) 
標準タイムは不明(登山地図の収録範囲外) 

(往路)
古淵 05:37-06:09 東神奈川 06:12-06:14 横浜
横浜 06:20-06:56 京急久里浜 07:05-07:14 東京湾フェリー
久里浜港 07:20-08:00 金谷港

(登山行程)
金谷港       08:05
沢コース登山口   08:20
東の肩       09:15-09:20
鋸山        09:30-09:40
東京湾を望む展望台 09:50-09:55
百尺観音      10:15-10:20
山頂展望台     10:25-10:30 (地獄のぞき)
日本寺(大仏広場)  10:40-10:50
保田駅       11:20

(復路)
保田 11:33-11:37 浜金谷/金谷港 12:25-13:00 久里浜港
東京湾フェリー 13:10-13:19 京急久里浜 13:29-14:04 横浜
横浜 14:14-14:58 古淵


大きなマップで見る(Googleが運営するFirebaseのサイトに遷移します。※上に埋め込んだマップも同サイト上のものです)

今回は、いつもとは少々違う写真から始まります。こちらは東京湾フェリーの船内の様子。普段ならば、登山口までのアクセスは電車かバスと決まっているのですが、今回は珍しく船上の人となりました。
客室は空いていて、ゆったりとリラックスして過ごせる雰囲気が心地良かったです。
房総半島の山は5回目となりますが、過去4回はいずれも陸路(JR線またはアクアライン(高速バス))を利用していて、海路の利用は今回が初。山行全体でも、2008年の伊豆大島(三原山)以来2度目の乗船です。
東京湾の風景を見ながら、40分ほどの船旅を楽しみました。
金谷港が本日のスタート地点。フェリーから下船したら、そのまま歩き始めるという、まさに海抜0mからのスタートなのでした。フェリー乗り場で振り返ると、海を挟んで富士山がきれいに見えていました(写真左端)。


浜金谷駅付近をスルーして車道を進んでいくと、JRの線路をくぐった先に、登山口と標識が見えてきました。
より一般的な2つの登山道は、いずれもこの分岐を右に進むのですが、今回選んだ沢コースは左に入ります。


沢コースを進んでいくと、やがて右手には、岩壁が連なる鋸山の異様な山容が見えてきました。
コースの名前通り、しばらくは小さな沢に沿って進みます。
はじめは車も通れるような道でしたが、上流へ向かうにつれて細い道へと変わりました。
道は所々でぬかるんでいて、あまり歩きやすくはありません(ここ何日か晴天が続いていたのにこの状況なので、普段からこうなのでしょう)。ただし要所には道標が設置されていて、道迷いの心配はなさそうでした。
途中ではこんな掲示を見掛けましたが、山歩きに慣れている人が危険を感じるような箇所はありませんでした。
観光地化された山にありがちな、観光客が軽装のまま入り込まないように注意を促すための物だと思います。


その掲示のすぐ先で、登山道はトンネルに潜ります。なんとこれが、房総半島に多くあるとされている素堀りのトンネルで、ここを通るのもこの日の楽しみのひとつでした。
トンネルを通り抜けてから振り返りました。長さは20~30mで、写真でも分かる通り、最初から出口の明かりが見えているものの、内部はほぼ真っ暗。いつも持っているヘッドライトを出して、照らしながら歩きました。
トンネル内はずっと下り勾配。地面も凸凹で歩きにくく、ライト無しで足元が見えないと不安だったでしょう。
沢沿いを進む間は傾斜が穏やかでしたが、トンネルを抜けた先で沢を離れると、急な登りが増えてきました。
次第に、やや荒れた感じの鬱蒼とした森の中に入っていきます。
このあたりで、先行していた単独行の男性を抜かしましたが、沢コースで見掛けたのは結局その人だけでした。


やがて、補助ロープが掛けられた一帯に入っていきます。
そして間もなく、ネットでも写真を良く見掛けた、このコースの象徴的な岩場に差し掛かります。
事前に見ていた写真の印象から、ここはロープがなければどうにもならないと感じていたのですが、実際には岩の凹凸や木の根などの手掛かり足掛かりが豊富にあって、意外にもロープを全く使わずに通過できています。
その後もロープ場がもう少し続きますが、登りだからか、最後までロープを使う必要には迫られませんでした。
ロープ場がこのコースのクライマックスだとばかり思っていたら、その先にもっと急な傾斜の登りが控えていて、しかもそれが少し長かったので、体力的にはこちらのほうが堪えました。


急坂を登り終えて、東の肩に着きました。ここでひと息入れて落ち着きたいところだったのですが・・・
金谷港でフェリーを下りた時から、風が強いことは感じていましたし、ここまで高度を上げてくる中で、強烈な季節風に晒されることが増えていたのでしたが、稜線上に出たらその強風が唸りを上げて吹き荒んでいました。
登り始めてすぐに脱いでいたジャケットを慌てて着込み、たいして汗もかいていないのにヘッドバンドを出して耳を覆います。寒風に間断なく襲われて体感温度は相当に低かったと思われ、幸いにも防風のしっかりしたジャケットを着ていたので、なんとか寒さをしのげましたが、ベンチに腰掛けての休憩は5分が限度でした。


東の肩から先は稜線歩き。しばらくは緩やかな登り坂で、少しずつ頂上へ登り詰めていきます。それにしても、写真では穏やかに晴れているようにしか見えませんが、実際には強風が吹き荒れて、寒さが厳しかったです。
手すり付きの木段が現れたら、そこからは一気の登りとなって頂上を目指します。


鋸山の頂上には、この写真に収まった範囲がほぼ全てという、狭いスペースがあるだけでした。周囲では相変わらず寒風が猛威を振るっていますが、なぜか頂上の一角は風が遮られていて、落ち着いて過ごせています。
このとき頂上は無人で、10分ほど休んでいる間にも誰も現れませんでした。登り始めて以来、自分以外の登山者を1人しか見ていないという状況が続いていて、比較的メジャーな山に来ているという気がしません。
鋸山には一等三角点が設置されていました。前回の高尾山(横浜市)に続き、2回連続の一等三角点ピークです。
周囲の樹木のために、頂上からの展望は、北側の割と狭い方角に限られていました。
前の写真の中央部分を少し大きくしてみました。富津岬の先には、横浜・川崎付近の湾岸部が見えています。


鋸山の頂上から、稜線をさらに西へと進むと、小刻みなアップダウンがまだまだ繰り返されるのでした。
3回目くらいのアップダウンの先に、「東京湾を望む展望台」への分岐があったので、さらに登ってみます。
「東京湾を望む展望台」からの眺めは、とにかくスケールが大きくて、それはもう見事なものでした。
しかも、この場所もこの時は無人。その素晴らしい展望を独占できて、とても贅沢な気分も味わえています。
「東京湾を望む展望台」の展望図です。その広角さが、いかに広い範囲が見渡せるかを示していました。


こちらが、見る者を圧倒する「東京湾を望む展望台」からの展望です。
冬晴れの中、遠くまでスッキリと望めて、富士山・伊豆大島・伊豆半島の天城山などが良く見えていました。
  ※下の写真は山名ガイドを入れた縮小版で、大きな写真(文字入れなし)は こちら です。
富士山のアップです。
こちらは伊豆大島のアップ。写真だとぼんやりとした印象ですが、実際にはもっとクッキリと見えていました。
左端が伊豆半島の天城山、手前はロープウェイの山頂駅で、その右上に三浦半島の先端あたりがあります。


「東京湾を望む展望台」から登山道に戻ると、その先に待っていたのは長い階段での急降下でした。
この階段があまりに急で、1段あたりの段差も大きく、時々手すりに掴まりながら下らないと危なっかしかったほど。ぼちぼち登山者や観光客を見るようになっていましたが、観光客には結構手強いのではと感じました。
建築資材に適した凝灰岩から成る鋸山は、房州石と呼ばれる良質石材の産地として、盛んに採石が行われた歴史を持っています。その山名も、採石後の露出した岩壁が、鋸の歯状に見えることに由来しているとか。
登山道も、ここから先は、房州石を切り出していた石切場跡の近くをたびたび通るようになります。
次に向かう「地獄のぞき」が見えてきました(写真中央で空中に突き出した部分)。
このあたりの岩壁も、すべて房州石を切り出した跡で、「地獄のぞき」を含めて天然の造形ではありません。
こんな姿になるまでに、一体どれだけの量の石が切り出されたのだろうか。
このまま、北斜面を下って浜金谷側に戻るのならば何の問題もないのですが、日本寺がある南側に回るためには、遙か上に見えていた「地獄のぞき」まで登り返して、稜線を越えて行かなければなりません。ここからは階段の連続となり、先程急降下した分の高度を一気に取り返します。今回の行程中、ここが一番きつかったかも。


長かった階段が一旦終わると、そこには日本寺の北口管理所がありました。
ここから先は日本寺の境内に入るため、ここで拝観料(600円)を払っていきます。このとき空いていたからか、受付の方からは、境内の各所に点在するさまざまな見所についての、詳しい説明を聞くことができました。
北口管理所のすぐ先には、この巨大な百尺観音があります。石切場跡の岩壁に観音像が彫刻されたものですが、昭和35年~41年にかけての完成という比較的新しい観音像なので、歴史的な面白さはあまり感じませんでした。
このところ急な登下降が連続して、結構足にきていましたが、百尺観音の先も、まだまだ登り階段が続きます。
今回のコース設定では、鋸山の頂上までは序の口で、頂上を越えた先に、最大のヤマ場があったのでした。


「地獄のぞき」などの展望台がある一角まで登り詰めれば、ようやく、あとは下るだけになります。
余談になりますが、この一帯が「山頂展望台」と名付けられていたことには、違和感を禁じ得ませんでした。
名前だけの問題でもありません。日本寺公式サイトの案内図は、(恐らく意図的に)鋸山の本来の山頂が完全に省略されており、その案内図だけを見ると、誰もがここを鋸山の山頂だと思うような書き方になっているのです。
この状況では、てっきり鋸山に登頂したと思っていた人が、あとで良く調べてみたら、自分が立ったのは山頂でもなんでもなかったことが判明する、というような悲劇が、数知れず起きているような気がしてなりません。

日本寺の境内なので、どこにどういう名前を付けるかは日本寺の自由でしょうし、どうしても山頂が境内にあることにしたいという思いが表れてしまったのでしょう。好意的に見れば、さすがに「鋸山の山頂」とまでは明記されていないので、あくまで日本寺の山頂ということなのかもしれません。だとしても、人を正しい道に導こうとするはずの宗教法人が、人を惑わすようなことをしているのは、あまり感心できないように思います。


閑話休題。「山頂展望台」という名の展望台に立つと、「地獄のぞき」をほぼ真横から見ることができます。
実際に行ってみましたが、そこに立ってしまうとオーバーハング上にいることが分からなくなるので、怖さを感じることはありませんし、手すりが付いているため安全に行動することが可能でした。
「山頂展望台」からも、東京湾を広く見渡すことができましたが、さきほどの「東京湾を望む展望台」からの眺めのほうが見事だったようです。富士山(写真左上)も、時間の経過とともに、少しずつ霞んできていました。
その「東京湾を望む展望台」を見ると、自分がいた時は無人でしたが、この時は何人もの人の姿がありました。
それにしても、ここでもカメラを持つ手がなかなか固定できないほどの強風に見舞われて、撮影が大変でした。


「山頂展望台」から南側に下ってすぐの「西国観音」の前で、それまで吹き荒れていた強風からやっと開放されました。南斜面に入ったことで、稜線にブロックされた北風の影響をほとんど受けなくなったのです。
日本寺の境内は、しっかりした遊歩道が整備されていました。坂道もすべて階段道になっていて、この先にはもう、山道を歩く箇所はありません。次の目的地となる大仏広場へは、長い階段道を延々と下っていきます。
大仏広場は人影がまばらで、人が入らない写真を撮り放題。観光客が来るにはまだ早い時間だったのでしょう。
そして、広場は穏やかな日溜まりとなっていて、ジャケットを脱いでちょうど良いくらいの暖かさでした。
ホッとするようなポカポカ陽気の中、ベンチに腰掛けて、少しマッタリとした時間を過ごしていきます。
ここの大仏像は日本最大で、奈良東大寺の倍近く、鎌倉と比べると3倍近い高さがあるとのことなのですが、そんなにバカでかい印象はありませんでした。ひと山まるごと切り崩す勢いの壮大な規模の石切場跡や、巨大な百尺観音を見てきた後なので、大きさの感覚が少し麻痺していたのかもしれません。


大仏広場を後にしたら、この薬師本殿などを見ながら、境内をさらに下っていきます。
日本寺は、昭和14年の登山者の失火による火災で、国宝の仏像や堂宇などの全てを焼失する災難に見舞われた過去があり、現在も復興の途上にあります。この薬師本殿も、平成19年に再建されたばかりの新しいものでした。
鐘楼や頼朝蘇鉄のある場所から振り返った鋸山が、境内からの見納めとなりました。でも帰宅後に確認すると、見えていたのは裏にロープウェイの山頂駅がある一帯で、歩いてきた登山道があるあたりではなかった模様。
その後は表参道管理所(写真左端の建物)を抜けて、観音堂の前を通ります。
次いで立派な仁王門をくぐり、表参道を逆行する形で下っていきます。
良く整備された参道がどこまでも延びていました。綺麗に掃き清められていて、手入れも行き届いている印象。
階段が続きますが、日本寺境内の階段は歩きやすくて、下りがずっと続いてもあまり苦になりませんでした。
でも逆コースで歩くと、登りがすべて階段になるので、さすがにそれは堪えるだろうなぁ。
表参道の入口まで下ったら、そこから先は舗装道路となりました。


海が見える所まで下ってきたら、あとは道標に従って保田駅を目指します。
田園風景の中で、線路沿いに続く道をのんびりと歩きます。
ゴールの保田駅に到着しました。帰りも東京湾フェリーを利用するので、日本寺から下った後で浜金谷方面に戻れるとベターだったのですが、鋸山に再度登り返すのを除外すると、トンネル内でも歩道がないような国道を歩く以外の選択肢はなさそうでした(バスを利用する手もありましたが、時間が合わなかったのです)。
そこで仕方なく、保田駅まで歩いた上で、すぐ隣の浜金谷駅まで電車で移動することにしました。
保田駅の跨線橋から、最後に鋸山を振り返りました。頂上はもちろん写真右端です。
ホームの真上あたりが日本寺の境内にあたりますが、その上の稜線ではロープウェイ山頂駅の白くて目立つ巨大な駅舎が異彩を放っていて、とても目障りに感じました(これだけ縮小した写真でも存在が分かります)。
なお、この頃には富士山はすっかり霞んでいて、周囲に雲も出てきたため、ほとんど見えなくなっていました。

タグ:房総半島
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